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頚椎後縦靱帯骨化症

どんな病気?

 多分ほとんどの方は、聞いたことがない病名でしょう。くびの骨は「じゃばら」のようにいくつかの骨(正確には7コ)がつながっています。その骨がバラバラにならないように「スジ=靱帯」が骨をささえています。支える靱帯は骨の前と後ろにあります。そのうち骨の後ろ側にある靱帯が「後」縦靱帯です。それがなぜか「だんだん太くなり」「骨のようになる(骨に化ける=骨化)」というものです。くびの骨の後ろには、「脊髄」が通っているため、その骨になってしまった靱帯が脊髄に刺さり込んで神経麻痺を起こすのが靱帯骨化症です。アジア人に多いためかつては「アジア人の風土病」といわれた時代もあったようです。ですが、実際には欧米人にもあります。ちなみに「前」縦靱帯骨化症 も有ります。骨の前には「のど」や食べ物の通り道=食道 が有ります。前縦靱帯が骨化すると、食道に骨が刺さり込むことにより、食べ物が上手く通らず、「飲み込みにくい」「ノドに物が引っかかる」「むせる」といった症状が出ます。しかし食道は脊髄よりも圧迫に強いため、前縦靱帯骨化症で受診される方はマレです。

治療

靱帯骨化は遺伝、体質の影響があります。親や兄弟が「靱帯骨化」と診断されている場合も多く診られます。遺伝以外では、糖尿病の方、肥満の方で悪化しやすいという特徴が有ります。糖尿病のコントロールが悪いとみるみるうちに靱帯の骨化が大きく育ち神経があっという間にやられてくることもあります。そこで、靱帯骨化症と診断されて、糖尿病が有る方はまず糖尿病をしっかり治療することが大切です。靱帯骨化症に対する治療は、神経のしびれ、麻痺に対する治療となります。骨化した靱帯を「溶かす」薬は残念ながら今の所開発されていません。そのため治療は、しびれに対する薬、などいわゆる「対症療法」となります。

手術

手術は①「骨化した靱帯を削る」=クビの前側から靱帯を削る方法と②「脊髄を助ける」=クビの後ろ側から手術をして、脊髄の圧迫を解除して脊髄を骨化した靱帯から逃がす手術の2通りがあります。目的はいずれも「脊髄を助ける」事です。手術は②で行う事が多いと思います。いずれにしても、脊髄が傷みきってしまうと、もう回復しないということもありますので、麻痺がひどくなる前に脊髄を骨化した靱帯から逃がしてあげなければなりません。術後も骨化は増悪することがありますので、そうならないように糖尿病をしっかりコントロールしていく事が大切です。

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