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「切らずに治す」のウソ、ほんと

インターネットの発達により、誰でも手軽に情報を得られる時代になりました。欲しい情報が直ぐに手に入る、素晴らしいことだと思います。しかし、ネットから得られる情報のなかには明らかに医学的におかしな事、金儲け主義な情報もあります。また匿名というネットの性格上、「どこの誰でも、もっともらしいページを作れる」事に注意が必要です。たとえば私は全くといっていいほど料理が出来ませんが、そんな私でも「猪川先生の手間なし簡単クッキング」などという立派なホームページが作れてしまいます。最近も素人が投稿した電子レンジ調理法で爆発事故が相次いだとの報道があったばかりです。だれかが、もっともらしくウソの情報を書いてもそれがそのまま公表されますし、もっと悪どいのですと「この方法で保存したらお肉は腐りません!」などと宣伝してお金儲けも出来ます。ここまで嘘くさいとさすがに騙される人はいないとおもうのですが、こと病気となると皆さん正常な判断が出来なくなります。とくに病院で「手術した方が良い」などといわれると、どうしても「なんとかならないか」と考えてしまいます。そう思う気持ちもよくわかります。そのためなのか「切らずに治す」が検索項目の上位にランクされているそうです。そういう困っている人の気持ちにつけ込んで「これを飲んだら」「これを塗ったら」「この本を買ったら」「この器械を買ったら」切らずに治りますよ!というのは、末期癌の人に癌が治るとささやき、怪しい栄養剤を売りつけるのと一緒で、大変問題だと思います。このページを読んだ皆さんは、是非怪しいささやきに騙されないようにして欲しいです。たしかに中には正しいものもあるかも知れません。しかしそれらの記事にだまされ、いたずらに時間を浪費し、手術のタイミングを逃し、手遅れとなってくる患者さんを見るたびに無力感にさいなまれます。「医者は切りたがる」などとしたり顔で言う「識者」もいます。でもよく考えてみて下さい。すべての病気を「切らずに治せる」のならこんなに楽なことはありません。切らずに治せたら患者さんには感謝されるし、休みの日に消毒に行かなくてもいいし、晩酌も出来るし、枕を高くして寝ることも出来ます。フライパンのコゲは磨かないと取れません。手術も同じです。私は手術は最終手段だと思っています。手術以外ではもう方法がない、様子を見ていても治ってくる見込みがとぼしい、もしくは進行が予想されるといった場合に限って手術を行うべきと思っています。骨がつぶれて神経麻痺を起こしている人を「本当に切らずに治せる」のであれば、私は今すぐにでもその著者の所に行って土下座して弟子入りをします。この記事を最後まで読んでくれた方、知り合いの方が「耳あたりの良い」言葉に無駄な時間とお金を使ったあげく手術のタイミングを逃してしまった!などという事がないように教えてあげて下さい。「切らずに治す」という言葉を見たら「出来るだけ」「切らずに治す」し、「多くは」「切らずに治るけど」「中には切らなければ治らない病気もある」というように、頭の中で読み替えて下さいね。

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