骨粗鬆症
骨粗鬆症とは、骨に小さな穴が多発する症状で、背中が曲がったり、痛みや骨折が起こることがあります。これによって、寝たきりの症状になることがあり、症状が現れた場合は、早期に治療することが大切です。
どんな病気?
骨には中に細い柱(=骨梁)が無数にあります。たとえるなら、おみこしを多数の人(骨梁)で支えている状態です。大きな御神輿を100人で担いでいたところ、だんだんと担ぐ人が少なくなり、70人になったらどうでしょう?しかもその70人も、弱々しい人になったら? 一人一人に掛かる負担が多くなり、中には耐えられない人も出てきます。そんな状態の時に、おみこしの上に、誰かが飛び乗ったら(=転倒や尻もち)どうなりますか?担ぐのが限界となりつぶれてしまうかも知れません。それが骨粗鬆症による骨折です。つまり既に限界に近かったため、ちょっと手をついただけ、ちょっと尻もちをしただけ、ちょっとくしゃみをしただけで骨折を起こすのです。骨は目に見えないため、自分の骨が弱くなっているのかは、X線写真を撮ったり、骨密度検査をしないと気がつけません。
骨粗鬆症の治療
私が研修医の頃は骨粗鬆症の治療と言えばカルシウムを飲んだり、牛乳を飲むように指導したり、ビタミン剤を出すくらいしか方法が有りませんでした。しかし今では、いい薬がいっぱい出てきました。年齢や骨粗鬆症の程度により薬を使い分けられる時代になりました。薬と使い分けについてはここに書き切れませんので、待合室のビデオで流す予定です。骨はしっかり治療すれば若返ります! めざせ「骨美人!!」
椎体骨折(圧迫骨折)の治療
私たちには「治癒力(治そうとする力)」が備わっています。しかし、骨がスカスカになるとその治癒力が上手く働きません。つまり上のたとえの「御神輿を担ぐ人」が70人の所、20人分が骨折したとします。そうなると残りは50人です。その50人が、一人欠け、また一人、、、となると後から後から骨折が進行するのです。つまり頑張っても頑張ってもどんどん悪くなる、と言うことが起こります。そのように「非常に治りにくい状態」でそのまま経過すると、腰曲がり(老婆姿勢)をおこしたり、神経麻痺を起こしたりする危険もあります。骨粗鬆症による椎体骨折は実に6人に1人はなおりにくいタイプであると言われており、「頑張って」「粘れば粘るほど」どんどん悪くなる、という事が起こりえます。「治りにくい状態」と判断された場合つぶれた骨がしっかりするように骨セメントを詰める手術も有ります(BKPという方法です)。5mm程のキズで30分程度で終わります。骨がつぶれたあと、いつまで経っても治ってこない方は、もしかしたら「非常に治りにくい状態」なのかも知れません。いつまで経っても治ってこない。だんだん悪くなる、腰曲がりがひどくなってきた、このような方はご相談下さい。
本当は恐ろしい椎体骨折
私たちには治癒力が備わっているため、骨折をしてもそのうち治ってきます。しかし腰の骨折には次のような恐ろしいデータがあります。「椎体骨折の6人に1人は非常に治りにくい可能性がある」「3人に1人はどんどんつぶれが進行する。」骨折が治らない場合弱って死んでいく人の割合は「ガンより多い」。これをきいてどうでしょうか。非常にビックリされる方が多いと思います。 「たかが腰骨の骨折で」「寝たきりになって」「弱って命取りになる」。ばからしいと思いませんか? ご家族が圧迫骨折といわれて、いつまでも痛がっていたら、是非お近くの整形外科を受診させてあげて下さい。
新しい治療法=BKP とは?
かつては腰骨がつぶれたら、安静に寝ているくらいしか打つ手がありませんでした。しかもしっかり寝ていても1度つぶれた骨は元に戻らず「つぶれたまま固める」しかなかったのです。例えば脚の骨が折れて、まがったまま固まったらどうでしょうか?悲しいですよね? 腰も同じはずです。長年医者と患者を苦しめてきた「つぶれたまま固めるしかなかった問題」を改善すべく新しい治療法が出てきました。それがBKPです。
どんな方法?
つぶれた腰骨の中に針を刺します。麻酔をしているので痛く有りません。しかも針の先には強い風船が付いていて、つぶれた腰骨、せぼねを出来るだけ元の形に膨らませ形を整えられます。そうしておいて骨の中につっかえ棒=セメント を詰め込みます。そうすることにより、腰骨のぐらつきを減少させます。そうすると腰骨がどんどんつぶれる現象をストップしてくれて、骨折に治癒力が働き体の中から治ってくる力を引き出して骨が出来て治ってきます。キズは腰骨の左右に5mm程です。局所麻酔でも出来そうな手術ですが、念のため全身麻酔で行います。手術が終わりましたらその日から食事や歩行が可能ですし翌日退院する方も多く居ます。術前に寝たきりに近かった方は、しっかりとリハビリすることも大切です。圧迫骨折を起こして、いつまでも痛いのを我慢していると、骨がどんどんつぶれることがあります。そうすると神経に骨が刺さり込んで麻痺を起こしてきます。こうなるともうBKPは出来ません。
BKPが出来ない場合
非常にいい方法であるBKPですが、すべての椎体骨折に行えるわけではありません。「つぶれて固まってしまった」り、「つぶれすぎて神経麻痺を起こしている」場合はBKPには手遅れです。その場合は「大きな手術」が必要となります。そうならないように、BKPの必要性があるかどうか、間に合ううちにしっかりと判定してもらうようにして下さい。
まとめ
私は1990年代にアメリカでこの手術を勉強する機会を頂き「早く日本でもできるようになって欲しい!」と期待していました。ですが日本に来たのは2011年でしたのでかなり待たされました。導入後は それまであきらめるか大手術をするしかなかった人が、次々と治って退院していくのを経験して、本当にいい方法だと実感しております。ただ、まだ世の中に広く認知されているとは言えないのは私も反省するところです。骨粗鬆症による骨折で苦しんでいる人が一人でも多く救われて、寝たきりにならないようにしたい、そして「たかが骨折」で弱っていく人を無くしたい!!そう思っています。当院はこのBKP手術の「指導施設」になっているため、全道から沢山の先生が勉強にいらしてくれます。BKPの普及に多少なりとも貢献できて光栄です。ただ、BKPがまだまだ世の中や、他科の先生に広がっていないのか、「BKPが既に出来ない状態」になってから紹介されてきたり、患者さんが「何かおかしい」と自分でコッソリ受診した方が「既にBKPには手遅れ」であったりをみるにつけこの画期的治療法をもう少し旭川の方に伝えていく努力をしなければいけないと反省をしております。